研究助成プログラム

助成研究テーマ

平成27年度タカタ財団研究助成

公益財団法人 タカタ財団の平成27年度研究助成について、公募の結果下欄の8件の新規研究テーマを選考、決定しました。 また、特定研究として下欄の1件を決定しました。

(敬称略・申請順)

助成研究テーマ 助成研究代表者 助成区分
1
交通シーンのエピソード記憶に基づく安全予測モデルの構築
研究概要

本研究では,長期記憶と位相写像を扱う機械学習アルゴリズムを用いて,エピソード記憶を工学的に実現し,安全予測モデルの構築を目的とする.運転者は交通環境に応じて安全知識を切り替え,運転している.例えば,公園や学校の付近では歩行者の飛び出しや自転車などの行動に注意を払っている.
高速道路やバイパスでは,高速に移動する車両や変化の少ない景観に対して,眠気に襲われないように注意しながら運転している.このように,安全を確保するための予測モデルは,交通環境や交通シーンに応じて柔軟に切り替える必要がある.

人間は過去の経験や体験などの経験知に加えて,周囲からの集合知を得ることによって安全知識を高め,危険予測や状況判断を行っている.しかしながら,現在の工学的手法による予測モデルでは,センシング情報から得られる履歴データから,確率的に事象を予測するのが限界である.一方,脳科学分野では行動予測や意図理解に関する研究が盛んに行われており,最新の知見によると,人間は未来の出来事を予測するために記憶を蓄積し,整理・編集していることが示されている.特に,未来予測には,対象シーンにおける文脈として位置付けられるコンテクストと対象者の感情が,出来事として結び付いたエピソード記憶の寄与率が高いと言われている.本研究では,交通シーンにおけるエピソード記憶を工学的にモデル化し,安全予測に与える影響を明らかにする.

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秋田県立大学
准教授 間所 洋和
公募(新規)
2
緑内障などの眼疾患による視野障害からの交通事故リスク推定法の確立
研究概要

自動車運転事故と視野障害の間には関連がある。緑内障は視野障害を呈する眼疾患の代表的なものであるが、20人に1人という極めて高い頻度の疾患であり、また、本邦における失明原因として最も多いものである。緑内障は網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気であり、一度喪失した視野は回復させることができない。特にその発生頻度は年齢とともに増加していくため、高齢化社会における緑内障による視覚障碍者の増加が強く懸念されている。これまでに緑内障の両眼有効視野障害と運転事故リスクの間に強い関連があることが報告されている。しかし両眼有効視野は通常の眼科診療では全く施行されていない。一方本応募者らは通常の眼科診療で行われている片眼ずつ行う静的視野検査の両眼の対応する視野部位の感度を比較することで両眼視野を正確に推定する方法を提唱した。この方法は、簡便で且つ書字読字、歩行などの日常生活の様々な局面でのQuality of Visual Lifeの推定に有用であり、またドライビングシミュレーターを用いた仮想運転能力テストの成績とも関連している。しかしながら本応募者らはこの両眼推定視野と実際の運転事故の既往との間には実際には何ら関連が見られないことを報告した。これは実際の両眼視では優位眼、非優位眼の間で両眼視野闘争が起こっており、運転のような危険度が高いタスクにおいては両眼視野感度をもっと繊細に推定することが必要であることを示していると思われる。そこで、優位眼、非優位眼の間で起こる両眼視野闘争を勘案しながら精密に両眼視野感度を推定し、この方法で得られた両眼推定視野と実際の運転事故既往および運転時の恐怖感との関連を明らかにして、どのような視野障害パターンが運転事故歴に関連しているのかを特定する。

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東京大学 附属病院
特任講師 朝岡 亮
3
Web調査による高速道路における逆走発生仮説の検証
研究概要

近年,高速道路で様々な逆走対策が実施されているにもかかわらず逆走発生件数はほぼ横ばいで推移している.効果的な対策を考案するには,時間帯や場所などの逆走多発条件を特定し,それに基づき逆走が発生する過程を把握し,その過程のどこに原因があるのか運転者挙動および交通環境の観点から明らかにする必要がある.以上の観点から,申請者は,タカタ財団平成26年度助成研究として,以下①〜④の研究を行った.

① 逆走発生事案調書の統計解析結果に基づき,逆走が多発する箇所,時間帯などの逆走多発条件を特定した.
② ①の結果に基づき,京都縦貫自動車道の舞鶴大江ICと宮津天橋立ICを調査対象として選定し,ICの形状や標識等の道路付属物,逆走対策工等の物理的交通環境を調査した.さらに交通・道路管理者へのヒアリングを行った.
③ ②の結果に基づき,考え得る全ての逆走発生経路を書き出し,物理的交通環境の調査結果から,逆走発生の可能性が無いものを削除することで逆走発生経路を把握した.そして全ての逆走発生経路について,運転者の行動心理や視知覚の観点から考察を加え,逆走発生に関する行動仮説(以下,逆走発生仮説)の構築を行った.
④ ③で得られた逆走発生仮説を整理・統合することで,逆走発生原因と,その対策方針案を提示した(添付表-1).

真に有効な逆走対策確立のためには,逆走発生仮説の検証が必須であり,これを本研究の目的とする.

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大阪大学大学院
准教授 飯田 克弘
4
軽度認知機能障害を内包する第二分類高齢ドライバの不適切な判断能力の特徴と予防安全方策
研究概要

本邦では,70歳以上の運転者による重大な交通事故は増加の一途をたどり,事故抑止には運転を控えさせればよいが,公共交通の貧弱な地方地域では,運転断念が自立した生活の断念につながり,社会的な問題である.警視庁におけるデータでは,高齢者の事故は,飲酒や速度違反等の交通ルール不遵守の原因は少なく,運転操作不適,漫然運転,安全不確認等が成因であり,不適切な判断能力が高齢者の自動車事故の大きな要因となっている.実環境における高齢者の運転には個人差があることが言われているが,その個人差の背後に,不適切な判断能力の個人差が存在する.このよう運転者の運転安全対策の一環として,平成21年6月から75歳以上の高齢者免許更新時に認知機能検査の実施が開始され,講習予備検査で認知機能が低下している(第一分類)と判定され,かつ一定の交通規則違反があった者は,認知症であるという臨時適正検査の診断を踏まえて,運転免許証の取り消しが行われるようになった.しかし,記憶・判断力等の認知機能がやや低下している(第二分類)と判定された人は,規定上,運転継続には何ら制限がない.そのため,「運転に関わる認知機能が低下した」健常高齢者および軽度認知機能障害を内包する第二分類のドライバへの運転安全性へ対策が必要であり,本研究では,このようなドライバの日常運転における不適切な判断能力が及ぼす不安全行動の特徴を抽出し,その特徴を考慮した予防安全方策の提案を行うことを目的とする.

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東京大学大学院
准教授 小竹 元基
5
小児医療関係者のためのチャイルドシート着用に関する教育ツールの開発
研究概要

日本において小児の死亡原因の一位は不慮の事故であり、その最多は交通事故である。なかでも自動車乗車中に衝突すると重篤な傷害を負うケースが多い。こどもの死傷を防ぐ上ではチャイルドシートは有用な手段であり、諸団体が保護者を対象に啓発活動を展開しているが、日本自動車連盟の報告ではその着用率は改善傾向にあるものの依然6割程度に留まっている。このような現状を改めるために、子どもの健康に直接的に関わり、健診や診療等で保護者と一対一で接することのできる小児科医や看護師の役割は重要といえる。ところが都内に勤務する小児科医190人を対象に行った調査では、事故予防の話を自信を持ってできる小児科医は少なく、その原因として「知識がない」という理由が最多であった。チャイルドシートについては、約6割の小児科医がその使用年限や設置方法を全く知らないと答えていた。この状況を改善し、チャイルドシート使用をさらに推進するためには、小児科医、新生児に関わる産婦人科医や看護師らが、チャイルドシートの正しい使用方法やその保護者指導について効率的かつ能動的に学ぶことができる教育ツールの開発が必要と考え、今回の研究を計画した。さらにこの研究経験は、交通事故以外の小児の傷害防止についての小児科医や看護師、また新生児に関わる産婦人科医の指導力向上にも資することが期待される。

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都立小児総合医療センタ
医長 井上 信明
6
脳特性と歩行能力計測による高齢歩行者の交通事故リスク要因の
特定と個人対応型事故対策
研究概要

交通事故死亡者数は減少傾向にあるとはいえ、平成25年の死者数は全国で4,373人に達した。このうち、実に1,117人が、歩行中に事故に巻き込まれた高齢者である。この数を劇的に減らさなければ、交通事故問題の解決はあり得ない。この高齢歩行者事故を削減するためには、どのようなメカニズムで事故が発生するかを明らかにする必要があり、今までに数多くの研究が行われてきた。しかし、以下の2つの問題点が残されている。

★ 高齢歩行者の中で事故に遭い易い人と遭いにくい人との違いを解明できていない。
★ 高齢歩行者の身体能力や認知能力と、事故遭遇リスクとの関係を解明できていない。

一方、脳の状態と歩行異常については、「白質病変の増大に伴って、歩行能力や体幹バランスが低下し、転倒歴も増加する」ことが報告されている(Inzitari et al. Neurology, 2008)。
しかし、歩行中の交通事故との関係については調べられていない 。白質病変は、高血圧や糖尿病等の動脈硬化性疾患と関連性があり、健常中高年者の約30%に見られる無症候性脳虚血病変である。重度の白質病変は認知症と強い相関がある。我々は白質病変と交差点事故や危険運転行動との関連性ついて、これまでも国際学術雑誌に報告してきた。
本研究では、下記を主要研究目的として、高齢歩行者事故の実態調査を行う。

●歩行事故リスクと認知能力や身体能力の関係(どの程度増加させるか)を明らかにする。
●認知機能に係る脳特性(白質病変と脳萎縮度)と身体能力としての歩行能力を計測する。
●これらの事故特性データに基づいて、個々人に対応した歩行者事故対策を講じる。

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高知工科大学
准教授 中川 善典
7
軽度半側無視症例を対象とした危険運転予測評価システムの開発・検証と運転行動の分析
研究概要

半側空間無視(以下USN)は感覚的な刺激に対して、発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態であり、リハビリテーションを実施している脳卒中右半球損傷患者の約4割に認められる。
USN症例の自動車運転は軽度であっても危険があるため、禁止すべきであるとの意見が多いが、実際には、患者自身が詳細な症状の自己申告をしなければ、公安委員会の運転適性検査基準をクリアし、免許を取得できてしまうといった重大な問題点がある。重度から中等度のUSN症例については運転再開を考えるレベルに至っていないことが多いが、軽症例では日常生活上問題の無いレベルであることから、生活の行動範囲拡大や自立につなげるために、運転復帰させるべく自動車運転評価を実施することがある。このような活動範囲の広いUSN軽症例については、代表的なペーパーベースの机上検査である行動性無視検査(BIT)や日常生活の観察において異常はほとんど検出されないことが多い。しかし、申請者は、BITでの異常は認められないものの、ドライビングシミュレータ(DS)や実車運転においてはじめて左空間の無視症状(走行時の左側への偏位、左側車輪の脱輪や車両の接触などの危険)が観察された症例を複数例経験している。また、そのDSを用いた 経験から、危険運転との強い相関が疑われる検査の項目を見出すことができた。本研究では、軽度USN症例の運転危険性について、免許センターなどの現場において容易に把握できる検査ツールを開発することを目指したい。
本ツールの開発により、脳卒中後の危険ドライバー輩出を抑制するといった交通安全面の効果や安全運転支援のためのリハビリ、安全運転支援装置の開発といった支援基盤の確立・向上に繋げることが出来る。

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新潟医療福祉大学
助教 外川 佑
8
高齢者の交通事故傷害予測モデル開発と歩行中および自転車乗車中の傷害予測
研究概要

我が国の交通事故死傷者数は最近10年間において継続的に減少傾向であるが,年齢別内訳では65歳以上の高齢者の比率は増加傾向にある.平成25年の年間死者数のうち52.7%が高齢者であり,高齢者の交通傷害対策は喫緊の課題である.特に歩行中と自転車乗車中の死傷者数における高齢者の比率が高く,高齢歩行者,高齢自転車乗員の傷害対策が必要である.
我が国では平成17年より歩行者頭部保護基準が適用されているが,大人と子供を想定しており,体格が異なる高齢者を想定した評価ではない.また,高齢者は立位時の脊柱の彎曲,歩容(見た目に表れる歩き方)の特徴から,自動車事故時の人体挙動が若年者と異なることが予想される.自転車乗員の傷害対策については,最近になって申請者をはじめ,幾つかの研究機関で検討が始まっているが,高齢自転車乗員の傷害評価,対策はまだなされていない.

高齢歩行者・自転車乗員の傷害評価にあたっての最大の課題は,子供や若年者とも異なる高齢者の生体力学的特性や,その予後において高齢者の生活の質(Quality of Life, QOL)を大幅に低下させる大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折など高齢者特有の傷害評価が可能な傷害評価シミュレータが確立されていないことが挙げられる.
以上の背景より,本研究では高齢者の生体力学的特性を再現した傷害予測モデルを開発することを目的とする.さらに開発したモデルを用い,高齢歩行者・高齢自転車乗員の交通傷害予測を行い,高齢者の交通事故における被害を低減するための対策を検討する.

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芝浦工業大学
准教授 山本 創太
9
新型CT計測に基づく頸椎むちうち損傷の病態解明
研究概要

頸椎は交通事故における受傷部位の約50%を占め、頸椎損傷の被害者数・後遺症害者数は全被害者数のぞれぞれ48%、30%を占めており、全身体部位の中で最多となっている(2012年日本損害保険協会人身事故データより)。

このように交通事故による頸椎損傷は、人的・経済的損出が甚大であり、本外傷に対する基礎的・臨床的研究が求められている。頸椎損傷の詳細な病態解明には、単純X線による頸椎の2次元解析が行われてきた。しかし複雑な形状を有する頸椎の詳細な解析には3次元画像解析が有用である。頸椎の3次元画像はCT,MRIにより取得されるが、これらはいずれも臥位による撮影であり頸椎の生理的弯曲の影響が無視されている。本研究では、新たな3次元画像診断装置=新型CTの開発を行い、あらたな頸椎損傷診断ツールとすることを目的とする。この新型診断機器の開発により、頸椎損傷の基礎となる頸椎の形態データおよび頸椎の3次元動態を解析することで、交通事故により発生する頸椎損傷の病態解明の一助とする。本研究の最終目的は、本研究で得られたデータをもとに、より安全な自動車シート・ヘッドレスト等の開発や頸椎を保護する新たな安全機器の開発を可能とし、社会的損出の大きい本損傷による人的・経済的損出を減少することである。

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慶応義塾大学
特任准教授 名倉 武雄
特定研究

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