交通安全コラム

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第235回 地上最高速の争い(69)―英国からの挑戦(4)―

前回は、キャンベルのサンビーム350馬力車購入失敗から記録挑戦までの経過を紹介した。
今回は、キャンベルの記録挑戦走行と、確信した記録達成とその顛末を紹介する。

◆指針は時速160マイル
 ソルトバーンでのスピードトライアル(図)の計測区間では、強い風圧が顔に加わるのが感じられ、非常に速く走ったことを確信した。高速でこの大きなクルマを安定させるためにハンドルと格闘しながら、キャンベルは回転計を一瞥して、指針が時速160マイル以上を指していることを認めた。しかし、彼には、これは車輪の空転のためで、実際の速度はもっと低いことがわかっていた。ストップウォッチによる計測では、フライング1マイルは時速130.6マイルだった。

図1

◆進路に犬
 追い風に乗る帰路はさらに速かった。ところが、突然進路に犬が現れた。たとえ小さな犬でも、高速で衝突すればクルマは大きく損傷する。彼は、そのまま犬が走り続ければ衝突せずに済むだろうと予測しながらも、万一の場合でもクルマが安定を保って直進できるように、全筋肉を緊張させた。思う間もなく、クルマはぎりぎりのところで犬の脇をすり抜け、際どいところで衝突は避けられた。帰路は時速134.76マイルだった。

◆喜びの帰宅
クルマの持てる最高速性能が発揮できる長い砂浜での走行は、バンクでのレースよりもはるかにエキサイティングだった。キャンベルは、ギネスよりも絶対に速く走っているという確信を持って、サンビームのコックピットから地上に降り立った。事実、計時員も、彼の速度はブルックランズでのギネスより速いことを確認していた。
そこで、キャンベルは、英国人の誰よりも速く走ることができたという満足感を胸いっぱいに帰宅した。しかし、一方で、それほどの困難もなく速度記録を獲得できたことが、彼には意外でもあった。

◆最初の挫折
ところが、間もなく、彼は怒りと落胆で震えることになる。パリの国際機構が、彼の速度は公式規則に基づく電気式計時装置ではなく、手持ちのストップウォッチで計測されたものであることを理由に、新記録として承認するのを拒絶したことを告げられたからある。
 彼は、実際にはギネスより速く走ったが、世界記録への最初の挑戦には失敗したのだ。しかし、目標が想像したよりも達成困難なものであることを思い知らされて、彼の挑戦への熱意はかえって高まることになる。

今回は、キャンベルの記録挑戦と、記録達成確信後に味わった落胆と奮起を紹介した。
次回は、再挑戦のためにクルマを買い取ったキャンベルの熱意と期待を紹介する。

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