交通安全コラム

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第237回 地上最高速の争い(71)―英国からの挑戦(6)―

前回は、キャンベルの、挫折体験にくじけない再挑戦のための熱意と期待を紹介した。
今回は、再挑戦を前にして、ライバルの敵意と発生した深刻なクルマの故障を報告する。

◆国旗への思い
キャンベルの新記録挑戦への動機の一つには、「英国のために国旗を翻したい」という強い思いがあった。ダイヤモンド商い修業のため、彼がドイツに滞在した時、ボーア戦争の影響で、社会は反英感情に満ちていた。そのため、ある晩、彼が艀のマストに翻した英国旗ユニオンジャックが引き破られた。すると、彼は断固としてふたたびユニオンジャックを掲げて待ち伏せし、それを引き下ろそうとしたドイツ人を、水の中に投げ飛ばした。

◆戦勝国への敵意
デンマーク王立自動車クラブが主催するスピードトライアルは、西海岸にあるファーノ島で行われた。そこには、8マイルのかなり良好な砂浜がある。
キャンベルを迎え撃つのは、ドイツ、デンマーク、フランスなどのライバルたちだった。前年に優勝しているオペル車のドイツ勢は、再度ライバルたちを撃退することを決意し、英国には数年前の第一次大戦で負けているので、この戦勝国からの挑戦者には、特に敵意を燃やしていた。

◆英国の国威
キャンベルは、海外で競技をする場合、英国の国威を強く意識し、そこで勝利すれば、英国の自動車産業の技術力を他国に見せつけることができると考えていた。ファーノ島では勝利を確信し、英国の偉業を他国の参加者に印象付けようと、彼はホテルのポールにユニオンジャックを掲げた。ブルーバードの車体の横にはすでに国旗が描かれていたが、さらに、その上にも、誇らしげにユニオンジャックを大きく翻した。

◆故障の続出
キャンベルは、ブルーバードが完全な状態に仕上がっていると信じていた。ところが、理想的な状態で競技に臨める筈のクルマに故障が続出し、英国の国威を誇示しようとする彼の期待に応えられそうもない、という不安の念が高まった(図)。
まず、12気筒エンジンの油圧ポンプの交換が必要になり、車体カバーまで取り外さなければならなくなった。続いて、2速ギヤー交換のためギヤボックスの取り外しを余儀なくされた。さらに、有ろう事か、ショックアブソーバーの車体側の取り付けブラケットが脱落してしまった。

図1

今回は、再挑戦を前にして、ライバルの敵意と発生した深刻なクルマの故障を報告した。
次回は、メカニックの奮闘で可能になった再挑戦の経過と、キャンベルの落胆を紹介する。

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