交通安全コラム

交通安全コラム

第244回 地上最高速の争い(78)―三つ巴の争い(6)―

前回は、エルドレッジの記録に挑むキャンベルの対策と記録挑戦の舞台を紹介した。
今回は、安全管理が不十分だったコースでの不幸な出来事と次の挑戦の開始を紹介する。

◆後輪タイヤの脱落
観衆が鈴なりになっている区間で、両方の後輪タイヤが外れ、片方のタイヤがハンドブレーキレバーに当たって、ブレーキを締めたので、ブルーバードは激しく横すべりした。キャンベルは、あらん限りの力を振り絞って、クルマが群衆の中に突っ込むのを防いだ。
彼は、ふたたび、観衆の安全対策の改善を主催者側に要求したが、何も行われなかったので、観衆の安全への懸念が彼を悩ませ続けた。

◆少年の死亡
観衆が密集した区間を走行している時、突然、ハンドルが激しく一方に引っ張られた。前輪タイヤが脱落したクルマは、よろめきながら群衆に近づいて行く。キャンベルは死力を尽くし、かろうじて引き戻しに成功した(図1)。ところが、外れたタイヤに当った少年を死亡させてしまった。しかし、その審理では、走行前に事故の危険について再三アピールしていたこともあって、キャンベルの責任は問われなかった。
彼は、記録挑戦を4回試み、4回とも失敗した。しかし、繰り返しの挫折は、ただ、彼に再挑戦の決意を固めさせるだけだった。

図1

◆ペンダイン
 次の記録挑戦を検討している時、キャンベルは、英国自動車クラブが、1924年のトライアルの会場として、ウエールズ南西のペンダインとローアーン間の砂浜を選んだことを知った(図2)。そこは、およそ7マイルの直線の砂浜が使えて、計測区間に入る前に十分に速度を上げることができ、その上、1キロと1マイルの距離が既に公式に計測されている。このペンダインは、彼の次の記録挑戦の舞台として理想的に思えた。

図2

◆念には念を入れ
キャンベルは、かねてからの躓きの原因である計時方法について、走行タイムが英国自動車クラブによって公式に計時されるだけではなく、その装置がパリの国際機構によって公式に承認されていることに疑いないことを、念を押した。今回は、記録を破るだけではなく、そのあとで公式な承認が得られることも確認し、入念な準備をした。
ペンダインでは、砂の柔らかさが彼に敵対した。砂が硬い部分と軟かい部分の変り目で発生する車輪の空転による激しい前後動が、初日の記録達成を阻んだ。
 
今回は、安全管理が不十分だったコースでの不幸な出来事と次の挑戦の開始を紹介した。
次回は、キャンベルの再度の挑戦と宿願成就の模様と、彼の記録防衛の戦略を紹介する。

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