交通安全コラム

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第249回 地上最高速の争い(83)―大物新人の登場(4)―

前回は、シーグレイブのチーム内での地位の獲得と、記録挑戦者への抜擢を報告した。
今回は、彼が4Lサンビームの弱点をカバーしながら新記録を達成する経緯をお伝えする。

◆燃料弁の不具合
 1926年3月の1日と2日に、シーグレイブはサウスポートで数回の走行をおこない、2/3のストットル開度で時速150マイル以上を記録した(図)。しかし、新記録の樹立は簡単ではなかった。その走行で、混合気が薄すぎる兆候である気化器からの吹き返しが起こった。以前、燃料タンクから気化器へ行く管路のバルブに漏れがあり、交換したバルブの通路が細すぎたことが原因だった。

図1

◆スーパーチャージャーの破損
4Lサンビームのスーパーチャージャーは、小さなエンジンから大きな出力を引き出してはいるが、それが深刻なトラブルの原因になることも明らかになった。ブレードの先端がアルミ合金のケースに当たって、最初の走行で6個も壊してしまった。チームキャプテンが、スーパーチャージャーの負担を減らすため、1基を2基に増やそうと、クルマをワークショップに送り返すことを提案した。

◆エンジンを庇った北向き走行
しかし、シーグレイブは、クラブ派遣の計時員をそのまま留めて置いて、もう一度記録に挑戦したいと説得し、そこでできる範囲の修理をさせた。
3月16日の午後、シーグレイブは4Lサンビームを再びコースに持ち出した。スーパーチャージャーが壊れることを心配して、最初の北向きの走行では、スロットルを全開にせずにエンジンを庇った。

◆スロットル全開の南向き走行
 スーパーチャージャーが壊れなかったことに勇気づけられ、南への走行では、思い切ってスロットルを全開にした。クルマが無事に1キロの計測区間を過ぎた直後に、小さな乾いた川を横切った時、跳ね上がってすべての車輪が地面を離れてしまった。後輪の激しいホイールスピンで横すべりしたが、シーグレイブの本能的な反応でクルマは辛くも進路を保った。しかし、エンジンがオーバーレブして、再びスーパーチャージャーのケースが割れてしまった。

◆4L車で世界記録
ところが、この走行で、シーグレイブはフライング1キロの平均で時速152.33マイルを達成した。これは、キャンベルの保持する1キロの記録より良い数字である。一方、スーパーチャージャーの故障で1キロ区間走行後に減速したので、フライング1マイルではキャンベルの記録を破ることはできなかった。しかし、シーグレイブのフライング1キロの速度は、新しい世界記録として公認された。

今回は、シーグレイブが4Lサンビームの弱点をカバーしての新記録達成をお伝えした。
次回からは、これに対する二人のライバル、キャンベルとトーマスの反応をお伝えする。

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