交通安全コラム

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第252回 地上最高速の争い(86)―再び三つ巴の争い(1)

前回は、トーマスのシーグレイブ打倒の熱意での二日連続の新記録の達成をお伝えした。
今回は、キャンベルとシーグレイブのトーマスの記録更新阻止のための企てをお伝えする。

◆200マイルカー
一方、トーマスによって記録を奪われたシーグレイブは、彼をドライバーに抜擢したコータレンに、サンビーム社は時速200マイルに届くクルマを設計すべきであると進言した。その提案は受け入れられ、サンビーム社は、時速200マイルを目標とする画期的な記録挑戦車の製作に着手し(図1)、争いは三つ巴の様相を呈することになった。

図1

◆時間との戦い
キャンベルとトーマスは、その新しいサンビーム車がバブズやネーピア-キャンベルより高い目標速度で設計されていることを知らされると、シーグレイブがこのクルマで時速200マイルを達成して、二人の努力が徒労に終わる前に、先に時速180マイルに到達するべく作業に拍車を掛けた。今や、三人のクルマの開発は時間との必死の戦いとなった。

◆ネーピア-キャンベル
 ブルーバードの愛称を引き継ぐことになるネーピア-キャンベルは、記録挑戦だけを目的に設計されていた。完全に流線型化された一人乗りの車体は、スリムさと極めて低い最低地上高によって、長さが強調されていた(図2)。後車軸の下を通るフレームによって、巨大なエンジンと大きな変速機が非常に低く配置され、全車の重心高さが車輪の中心よりかなり低くなる安定性に優れた設計だった。

図2

◆航空用W12気筒
エンジンの“ネーピア・ライオン”は航空用のW型12気筒で、4気筒の3ブロックからなり、中央のブロックは直立し、左右のブロックはそれぞれ60度傾いた構造である。22299ccの排気量から毎分2000回転で450馬力、2200回転で502馬力の出力を発揮する。

◆変速機のトラブル
1927年1月2日ペンダインで、キャンベルは1分間に3マイル(時速180マイル)を走破する試みを行った。彼は、それまでネーピア-キャンベルを試乗していなかったので、新しいクルマの性能を早く知りたいと躍起になっていた。しかし、新機軸の遊星歯車式変速機のトラブルでクルマは停止し、雨後の柔らかい砂に沈みこんだ。

◆ワークショップへ
翌日、ネーピア-キャンベルは、変速機に十分手が掛けられて、コースに送り出された。しかし、ブレーキが効かず、続いて変速機に再びトラブルが発生し、クルマは砂に沈んだ。ギヤボックスの徹底的な改修のため、クルマをワークショップに持ち帰った時、キャンベルの心には、トーマスが先に時速180マイルに達して、先陣争いに負けてしまうのではないか、との懸念が重くのしかかっていた。

今回は、シーグレイブの200マイル達成前に新記録を狙うキャンベルの苦闘をお伝えした。
次回は、キャンベルの不屈の努力による目的達成の経過とトーマスの動向を報告する。

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