交通安全コラム

交通安全コラム

第256回 地上最高速の争い(90)―時速200マイル突破(1)―

前回は、トーマスの挑戦の顛末と時速200マイルを狙うシーグレイブの提案をお伝えした。
今回は、その1000馬力サンビーム車の事前の台上試験、初めての走行の模様を紹介する。

◆台上試験
クルマがほぼ完成すると、サンビーム社は、変速機や駆動系がこの大馬力を車輪に伝達できることを確認するため、台上試験を行った(図)。後車軸から動力を取り出して行うこの試験を見た雑誌記者の報告では、「エンジンが1000馬力以上を発生する毎分2200回転まで試験したが、振動はほとんどなく、車体は終始しっかりしていた」と書かれている。

図1

◆ローラー試験
しかし、タイヤでローラーを回転させる試験では、振動が激しく、それを見た技術者たちは、このような高速では、クルマは絶対に制御できない、と警告した。しかし、専門家の懸念にもかかわらず、シーグレイブは、ドライバーの最高峰に達した豊富な運転経験から、対応は可能と判断して記録に挑戦する決心をした。

◆デイトナ海岸
次の重要な課題は、時速200マイルに達することができるコースの選択だった。ヨーロッパの海岸は、加速と減速のための必要な長さがすべて不足だった。サウスポートで起こったような、空中への飛び上がりの繰り返しを防ぐスムーズさも求められる。そこで、以前から記録挑戦が行われ、23マイル(37キロ)にわたりフラットで、ほとんど一直線でスムーズな米国フロリダのデイトナ海岸が選ばれた。

◆チエンでも挑戦
トーマス断頭のニュースを受け取った時、シーグレイブは、すべてに慎重で入念なトーマスが、事を成行き任せにする筈はなく、チエンの切断はドライバー側の過失ではなく、チエン自身の欠陥から起こったに違いないと考えた。彼の1000馬力サンビームもチエンドライブだったが、彼は挑戦を躊躇することなく、合衆国に着いたらチエンを徹底的にチェックすることにした。

◆速い上げ潮
デイトナ海岸の卓越風は北東であるが、変化する時は、風向きが完全な円を描いて変わっていく。西風になると、大西洋に向かって吹くので、大きなうねりが砂の表面を壊して溝を作る。そうなるとツーリングカーでさえもそれに沿って走ることは不可能になる。砂浜の横幅は、全長に亘って干潮時で150m程度だが、傾斜が緩いので10センチでも潮が満ちてくると、40mも狭くなってしまう。そのため、走行可能な時間がかなり制約される。

◆不具合の改修
クルマは、最初の時速110マイル程度の走行で、操舵が難しいことがわかった。針路変更でハンドルを回す角度が大き過ぎたのだ。幸い予備のギヤボックスがあったので交換した。しかし、寸法の違いの修正と、交換のためにオイルタンクとボデーパネル、アンダーパンなど、取り外す部品が多く、この対策で計画に2~3日の遅れがでた。他には、後側のエンジンのラジエーターの機能が不十分なことがわかり、空気取り入れ口を大きくしなければならなかった。

今回は、1000馬力サンビームの台上試験、デイトナ海岸での走行の模様を紹介した。
次回は、シーグレイブのデイトナでの1000馬力サンビーム車での記録挑戦をお伝えする。

<前の画面へ戻る

Page Top

SSL GlobalSign Site Seal