交通安全コラム

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第258回 地上最高速の争い(92)―時速200マイル突破(3)―

前回は、シーグレイブによる1000馬力サンビームでの記録挑戦の往路の苦闘をお伝えした。
今回は、斜め追い風に助けられる復路での走行による記録達成と彼の感想をお伝えする。

◆最高速を記録
帰路は、北東から南西への斜め後からの追い風が吹いて最高速を記録した(図1)。彼は、強い集中力が要求されていたにもかかわらず、ハンドルのスポークの間から、素早く4個の回転計を一瞥し、指針が最大で毎分2200回転を指したことを確認した。この時、エンジンは1000馬力以上のパワーを出していた。風が側面から吹き付け続け、計測区間の終わりを示す縞の看板を通過する時まで、彼の筋肉は痛み続けた。

図1

◆偉大な飛躍
AAAのオフィシャルが計算を確認した後、シーグレイブが、フライング1キロの双方向平均で時速202.988マイル、1マイルでは203.792マイルの新しい世界最高記録を樹立した、と発表した。これを知って多数の群衆がシーグレイブのまわりに押し寄せ、肩に担ぎあげるという熱狂した場面があった(図2)。彼は全く冷静で、平静だったが、顔には激しい風圧の痕跡が見られ、痛む手首をさすっていた。

図2

◆何も覚えていない
彼は、感想を次のように語った。「はじめの走行では、風圧が大きく、ヘルメットのアゴ紐の穴が3個破けていた。ゴッグルも問題だった。下からの風がゴッグルを吹き上げて外そうとした。しっかり締めても延びてしまうので、ヘルメットの隙間に押し込まなければならなかった。時速200マイルを超えて5マイル走っている間はどんな感じだったのかは、正直いってはっきりしない。コース脇に並んでいた観衆には全く気付かなかった。」

◆客船の操舵員
「直進中は操舵が容易だったが、風で進路を外れると、戻すことは極度に困難だった。大きな客船のブリッジにいる操舵員の気持ちだろう。時間遅れがあってなかなか向きが変わらない。しかも、手の僅かの動きが進路に大きく表れる。突然の揺れによるほんのわずかな向きの変化を即座に修正しながら、ハンドルにきつくしがみつき続けた。」

◆何をやっても手遅れ
「時速200マイルを困難なく走れる速度にするには、新しいステアリングギヤボックス、特に研究された重量配分、新設計のブレーキが必要になる。その速度では、現在の設計では、クルマは、ほとんどコントロールすることはできないと言ってもいい。クルマの反応が非常に遅く、何をやっても手遅れになる。」

今回は、斜め追い風に助けられる復路での走行による記録達成と彼の感想をお伝えした。
次回は、シーグレイブの時速200マイルを突破した快挙の意義、それを実現した技術的配慮を解説する。

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