交通安全コラム

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第269回 地上最高速の争い(103)―大英帝国の雪辱(2)―

前回は、記録を奪われた英国側の動向、目標時速240マイルの車両の開発をお伝えした。
今回は、ゴールデンアローの車体の詳細と走行試験、新記録挑戦の経過をお伝えする。

◆皇太子の上覧
フレームは、左右の高さ33センチ、幅10センチのコの字断面の鋼板製の梁を多数の鋼管でつないだ梯子型である。車軸は強固な鋼管で造られ、前後とも強力な半楕円バネで車体に懸架されている。ステアリングギヤボックスは中央に配置され、左右それぞれの車輪を直接転舵する。金色の塗色の車体上面、ドライバーの前部には直進走行を助ける黒い帯がペイントされていた。この新車は、英国では非常に大きな関心を呼び起こし、デイトナへ輸送する前に、ピカデリーのショールームで英国皇太子の上覧に供された。

◆順調な試験走行
デイトナでは、シーグレイブは、初めて走った時に立ちはだかった困難に、再度直面させられた。およそ時速30マイルの横風は、砂浜に幾つもの峰を作り、彼は、クルマを直進に保つためハンドルと格闘しなければならなかった。しかし、試験走行には大きな問題はなく時速180マイルに到達した。彼はゴールデンアローの性能に満足し、記録挑戦に移る決心をした。

◆記録再奪取成功
1929年3月11日の挑戦で、シーグレイブは、1キロで時速231.446マイル、1マイルで時速231.362マイルの記録を樹立した(図1)。彼は、英国のために合衆国から記録を取り返したばかりか、それを、時速23.894マイルという驚くべき上昇幅で達成した。この経緯を、当時の雑誌に掲載された国際電話での彼へのインタビュー記事を要約してお伝えする。

スライド1

◆役立った照準器
 「デイトナのシーグレイブです。すべてうまく行きました。」「加速では、回転計の目盛りを見ることができ、毎分3200回転ピッタリで1速から2速、3速に変速した。計時区間の初めと終わりは、2基の50フィートの高い架台に渡されたワイヤーにつるされた大きな赤いアーク灯で示されていた。これは、ほぼ1マイル手前から見ることができた。」
明りが見えたので、いつもならラジエーターキャップを使うところだが、新たに取り付けてくれた照準器を使った。コースを定めることは非常に難しいが、これが役立った(図2)。」

スライド2

◆悪い走行環境
「天候は非常に悪かった。コースの全長に亘って、ところどころに霧があり、全般に視界は非常に悪かった。一部では1マイル先まで見えたが、大部分は3/4マイル程度だった。だから、計時区間を示すアーク灯は非常に有効だった。砂の状態は非常に悪かった。前回走った時よりも。キャンベルが記録を出した時より悪いと教えられた。砂の上には、かなりの区間で水が浮いていた。」

今回は、ゴールデンアローの車体の詳細と走行試験、新記録挑戦の経過をお伝えした。
次回は、シーグレイブの新記録達成の経過と彼へのインタビューの後半をお伝えする。

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