交通安全コラム

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第270回 地上最高速の争い(104)―大英帝国の雪辱(3)―

前回は、ゴールデンアローの車体の詳細と走行試験、記録挑戦の経過をお伝えした。
今回は、シーグレイブの新記録達成の経過の彼へのインタビューの後半をお伝えする。

◆冷却液噴出
 「クルマの挙動は、北向きと南向きの走行では全く同じだった。しかし、最初の走行で、エンジンからの冷却液がパイプから噴出してウインドシールドを曇らせたので、隅から走路を見なければならなかったので大変だった。」「クルマの操縦性は非常に良かった。走行後、用心のため全てのタイヤを交換し、パイプを修理し、水と燃料を追加した。どちらへの走行時も風速は時速20~25マイルで終始完全な横風だった。」「走行中は、排気管が前にあるのに、風の轟音で排気音は全く聞こえなかった。」

◆ラジエーター損傷
「最も厳しかったのは、第二回目の走行の計時ラインを踏む直前だった。溝を乗り越えてクルマが捩じられ、ラジエーターが一つ損傷した。しかし、幸いなことにクルマは減速しなかった。損傷は、多分クルマが横すべりして、ラジエーター全体が捩じられて発生した。」
「全ての走行で、コックピットは、排気ガスは入らず、極めて低温だった。これは非常に重要なことで、排気ガスはドライバーに非常な悪影響を与え、もしクルマの設計が悪かったら、温度は耐えられなくなるほど上昇するからだ。」

◆余裕の記録達成
「条件が悪かったので、クルマは最高速に届かなかった。天候が良く、砂浜がなめらかだったら、正確な予想は難しいが、記録を時速4~5マイル程度上乗せすることができたのではないかと思う。とは言え、すぐにトリプレックスによって記録が奪われることがなければ、私はもう一度走るつもりはない。」「デイトナの人たちは、私のクルマを歓迎してくれ、あらゆる面で最大限の援助を受けた。」

◆レイ・キーチの拒絶
一方米国では、モンスターマシン“トリプレックス”のオーナーであるジム・ホワイト(図)は、英国に自己の世界記録を奪われたドライバーのレイ・キーチにその奪回を指示した。しかし、クルマが非常に危険であることを理由に、その要求は拒絶された。「10人を超えるベテランドライバーが、造りがいい加減なクルマの運転を拒否していた。記録に挑戦するドライバーは死ぬと思っている。」という、トリプレックスを試乗したドライバーの発言が記録されている。

スライド1

今回は、シーグレイブの新記録達成の経過の彼へのインタビューの後半をお伝えした。
次回は、トリプレックスによる米国の記録奪回の努力と悲劇に終わる挫折をお伝えする。

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