交通安全コラム

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第280回 地上最高速の争い(114)―デイトナ海岸の限界(2)―

前回は、キャンベルの時速300マイルへの車両改修とデイトナ海岸での試走をお伝えした。
今回は、デイトナ海岸での誰もが失望した記録更新の経緯と彼のその後の行動を報告する。

◆記録更新
3月7日になって潮が海岸をかなり改善したが、満足にはほど遠い状態だった。それでもキャンベルは熟考の末記録挑戦を決断した。コースは、凹凸が激しく、窪みは柔らかく、ホイールスピンが繰り返された(図1)。しかし、迎い風にもかかわらず、自身の記録より速い時速272.727マイルを記録した。追い風の帰路は、同様に困難な走行ではあったが、時速281.03マイルで、平均で276.816マイルの新記録だった。

スライド1

◆誰もが失望
大改修のクルマで、待たされた挙句のわずか時速4マイルばかりの惨めな記録の更新は、キャンベルばかりか、誰もが失望した。彼は、条件が良くなることを期待して、さらに二週間留まったが、無駄だった。ここが記録達成の場所としての役割を終えた事は明らかだった。キャンベルは、引退する前に時速300マイルを達成する決意を新たにし、デイトナ海岸に見切りをつけ、新しいコースに望みを託した。

◆新たなコース
 デイトナ海岸は、1928年以来、速度記録挑戦の舞台として幾つかの世界記録樹立に大きな役割を果たしてきた。しかし、高まるエンジン出力を有効に利用することが困難になったことは明らかだった。以前、キャンベルは、そこに満足せず南アフリカの僻地にコースを求め、多大な経費と時間を投入しながら徒労に終わった苦い経験があった。しかし、今回は、どうしても新たなコースを探さざるを得なくなった。

◆ボンネビル
米国人のアブ・ジェンキンスが長距離の世界記録を樹立したことで、ユタ州のボンネビルの塩平原が新たな候補としてキャンベルの関心を引いた。ボンネビルはロスアンゼルスから900キロ北東にあり、ロッキーに連なる山のふもとで、ソルトレイク市から200キロ離れているが、道路は整備されており便はよい。

◆塩平原
そこは、湖が干上がって塩が堆積した面積750平方キロ以上の広大な平原で、夏には気温が45°Cを超え、白い塩の表面が日光の反射でまばゆい。しかし、海抜高度が1290mで空気は乾燥しており、高温でも酷暑とは感じられない(図2)。ただし、塩の層の厚さがばらついているので、速度記録に使えるのは一部の領域だけである。候補となったのは、北東から南西に向かう全長13マイルのコースである。

スライド2

◆数々の利点
このコースは次のような利点が予想された。塩の表面が平坦なのでホイールスピンが少なくなる。表面が固いので砂浜に比べて優れた加速が得られる。コースの幅が非常に広く、観衆の危険を考慮する必要がない。全長にわたり平坦で起伏がない。天候が良好で走行を待たされることがすくない。キャンベルはコースを確認するため、ブルーバードを持って行くことを決断した。

今回は、デイトナ海岸での誰もが失望した記録更新の経緯と彼の今後の検討を報告した。
次回は、新たなコース、ユタ州ボンネビル塩平原の紹介と試走の準備状況を紹介する。

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