交通安全コラム

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第291回 地上最高速の争い(125)―好敵手対決(8)―モンスターの逆襲―

前回は、出力・重量ともに半分で弁慶に挑戦した牛若丸の奮闘とその成功を紹介した。
今回は、好敵手対決の第四ラウンド、記録を奪われたイーストンの報復をお伝えする。

◆空気抵抗低減
イーストンは、コッブに記録が破られ直後、ライバルを祝福した。しかし、軽量・小型マシンのレイルトンの性能の素晴らしさと、コッブの粘り強さを良く知っている彼は、記録更新の準備を怠らず、改良のアイデアを持って着々とクルマの改修を進めていた。その狙いは空気抵抗の低減だった。テールフィンを取り外し、さらに、冷却を水タンクのみに頼ることとし、ラジエーターを取り外して空気取り入れ口を閉鎖し、流線形化した(図1、2)。サーモスタットを手に入れる時間がなかったので、効率の良い氷冷却にはできなかった。

スライド1
スライド2

◆安定性の不安
記録を破られた翌日の1938年9月16日、イーストンは、報復することができることをコッブに見せようと、塩の上に乗り出した。コックピットに座っている時、彼が心配した問題の一つは、改修の第一項目のテールフィンの取り外しで、安定性が低下したら、はたしてサンダーボルトは黒いガイドラインに沿って走れるか、だった。

◆不十分な加速
計時装置の準備に時間が掛かって、彼はしばらく待たされて発進した。ところが、加速がそれほど良くなかった。待っている間に、エンジン温度が上昇し、混合気が薄くなったためであった。彼は遅いなりに最善を尽くした。ほどなく、テールフィン取り外したことの影響への懸念は消えた。クルマは、何の問題もなくコースを維持することができ、北向きの走行速度は1マイル区間で時速356.4マイルだった。

◆世界記録奪還
しかし、彼には、改修の第二項目の氷なしでは冷却水が過熱するかもしれない、という懸念が残っていた。帰路、実際、巨大な出力が冷却水を沸騰させて吹き返しが起ったが、サンダーボルトの調子は満足すべきもので、なんとか、彼は熱問題も切り抜けた。復路は、1マイル区間で時速358.6マイルだった。双方向の平均は、1マイル区間で時速357.50マイルとなり、彼は一日でコッブから世界記録を奪還した。

◆コッブ断念
イーストンに打ち負かされるのを見ていたコッブは、自分のレイルトンはイーストンのサンダーボルトより速く走れると信じていたので、記録奪還の方策を冷静に検討した。しかし、ボンネビルの塩の表面は悪化し、特製タイヤの残りも僅かになっていた。今回の記録挑戦では、設計者のレイド・レイルトンの企画が正しいことは証明されたが、幾つかの改善すべき項目もあることを教えられた。そこで、コッブは、報復を急がず、改修のためレイルトンを英国に戻すことにした。

今回は、好敵手対決の第四ラウンド、記録を奪われたイーストンの報復をお伝えした。
次回は、次回は、翌年、イーストンから記録を奪い返すコッブの奮闘をお伝えする。

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