交通安全コラム

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第302回 地上最高速の争い(136)―米国勢の挫折

前回は、米国人達の挑戦に参入する英国人キャンベルのクルマとトムソンの迎撃を紹介した。
今回は、トムソンの奮闘と、キャンベルの挑戦の経過を紹介する

◆時速406.60マイル
 一方、トムソンには運が向いてきたように見えた。凹凸の激しい路面の対策としてバラストを積み、ノーズに翼を設けたので、9月9日の最初の走行で、時速406.60マイルを記録した。ところが、帰路に変速機の軸が破損した。一方向では、彼はジョン・コッブの最高速記録、時速403.135マイルより速く走ったのだが、往復しなければ公式記録にはならない。

◆キャンベルの決意
キャンベルは、トムソンがコッブを上回る速度で走行するのを見た。彼は、アート・アルフォンズとドクター・オスティッチが走るのも観察していた。これらのアメリカ人達の不屈の精神が、彼の愛国心を強く刺激し、英国のタイトルを守らねばならないという決意をさらに堅固にさせた。

◆すべて順調
ふたたびブルーバードの準備ができた時、キャンベルは、走行速度を徐々に高めた。時速170マイルの速度に達した後、前輪のアライメントを修正し、速度を時速250マイルまで高めた。彼が破ろうとする記録が13年前の同じ日に塩平原で作られた9月16日、午前6時過ぎに十分満足できる状態で予備走行が開始され、速度を時速300マイルに高めた。すべては順調のようだった。

◆加速試験
次の走行は加速試験で、実際の記録挑戦に使う手順を確認することだった(図1)。メカニックはディスクブレーキを扇風機で冷やし、駆動系のオイルを冷えたものに替えた。タイヤが再び確認された後、ホイールカバーが戻され、キャンベルはコックピットに乗り込んだ(図2)。彼は、素早く駐車ブレーキを確認し、手順よく車輪のブレーキとエアブレーキをチェックした。

スライド1
スライド2

◆発走準備完了
彼は、ヘッドフォンのコードをソケットに差し込み、しっかりベルトをしていることを確かめ、計器盤のスイッチをオンにした。彼は、燃料が送られるのを確認してホーンを鳴らした。そこで、随行車のバッテリーでプロティウスタービンエンジンが始動され、涙滴型のキャノピーが彼の頭の上で閉じられた。

今回は、米国勢で一人残ったミッキー・トムソンの新記録への最後の挑戦でのトラブルと、新しいブルーバードによるドナルド・キャンベルの準備の経過を報告した。
次回は、英国の記録の死守を決意したキャンベルの行く手を妨げる思わぬ出来事の一部始終をお伝えする。

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