交通安全コラム

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第313回 地上最高速の争い(147)―英国人の執念―新コースの探索

前回は、スピリット・オブ・アメリカによるボンネビルでのブリードラブの新記録達成と、その認証問題についてお伝えした。
今回は、車輪駆動での記録達成に執念を燃やす英国人の行動をお伝えする。

◆再挑戦の資金獲得
1960年のボンネビルで、航空用ガスタービンを搭載する四輪駆動の “ブルーバード”号で速度記録に挑戦し、事故で挫折を味わった英国人、ドナルド・キャンベルは挑戦を諦めなかった。彼は、負傷が癒えると、新たな挑戦のため、前回支援したスポンサーへの再度の支援要請を精力的に行い、資金獲得に奔走した。

◆ボンネビルは限界
4250馬力のガスタービンは、ブルーバードを時速475マイルまで加速する力を持っていた。しかし、ジェット車と異なり、車輪駆動のブルーバードは、加速のための推進力を、ホイールスピンを起こさない範囲に抑えなければならない。これは、到達速度が高くなれば、より長いコースが必要になることを意味する。ボンネビルは、もはや限界だった。

◆代替コースの探索
キャンベルは、長さ20マイルのコースが造れる平坦な土地を探すことにしたが、これは非常に困難な作業になった。幸い、彼は、世界各地に事業所を有する石油会社BPに強いコネを持っていた。そこで、再挑戦資金のめどが立つと、彼は、BPに世界規模の調査を依頼した。その結果、予想もしなかったオーストラリアに有望な候補地があることが明らかになった。

◆内陸の盆地
そこは、南オーストラリア州アデレードの北およそ700キロの内陸にある、干上がって表面がコンクリートのように固くなった巨大な盆地であるエア湖である(図1)。19世紀に発見した探検家の名前が付けられたが、その後、忘れ去られた未開の僻地だった。予備的な調査結果は有望だったので、1961年中頃、キャンベルは詳しい情報を得るために調査チームを派遣した。

スライド1

◆大きく異なる地質
タイヤで支援するダンロップ社も、ボンネビルのために開発した、パタンのない外皮が極めて薄いタイヤの設計を変更する必要があるかどうかを判断するため、地層の特性を分析する専門家を送り出した。結果は、ボンネビルとは大きく異なり、表面の塩はキメがより細かく、下の土壌はもっと密度が高く圧縮されており、粘着係数は、ボンネビルの0.65に対し0.85と、好ましいものだった(図2)。しかし、新しいタイヤが必要だと判断された。

スライド2

今回は、英国人キャンベルによる、より長い新コースの探索とその候補地を紹介した。
次回は、候補地の決定と、作業者・資材の輸送とコースの構築作業をお伝えする。

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