交通安全コラム

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第315回 地上最高速の争い(149)―英国人の執念―雨との戦い(2)―

前回は、候補地のオーストラリアへ、降雨で一年遅れたチームの現地入りを紹介した。
今回は、記録挑戦を妨げる降雨との戦いを報告する。

◆ベースキャンプ撤退
数日後に、このベースキャンプに激しい降雨があり、キャンベルは、ブルーバードを水のかぶらない岸辺への退避を決断した。地盤が水で軟かくなっていたが、夜間、随行するクルマのライトを頼りに、彼が岸辺までブルーバードを運転した。間もなく、湖の一部は5センチの水で覆われてしまい、ブルーバードは、そこに数日間泊め置かざるを得なかった。

◆洪水の脅威
その雨は、すでに、北東のクイーンズランド州で洪水を起こしており、水はエア湖へ向かって川を流れ下りつつあった。今や、記録挑戦は時間との競争になった。苦労を重ねて完成したコースは放棄され、乾いた場所に新しく二つのコースが計画された。時速200マイルの予備走行用の全長10マイルのコースと、記録挑戦用の15マイルのコースである。これは幅75mで、計25マイルを掘り起こすことになり、かなりの時間がかかる。

◆必死のテスト走行
挑戦コースは、キャンベルが現地に到着してから3週間後になって完成したが、再び雨が降り出し、コースの一部が水に覆われてしまった。しかし、キャンベルは、かなりの横風にもかかわらずクルマを引き出し、25%のスロットル開度で、1マイル迄で時速170マイル、3マイル到達前に時速240マイルを記録する走行を試みたが、その先のコースに侵水があり、スロットルを戻さねばならなかった。

◆湖からの避難
数マイル先では豪雨になり、天気予報は悲観的だったので、キャンベルは、その晩、安全の観点からブルーバードとすべての主要装備を湖から避難させることを決定した。この作業は深夜に行われ、キャンベルがブルーバードを操縦し、水溜りがあるぬかるんだ道を経て、取り付け道路の端の比較的乾いた場所に到達した。

◆判断は正しかった
途中、数台の自動車がぬかるみに嵌まり込み、翌日まで放置された。翌日の、嵌まり込んだ自動車の回収と、軽装備品の避難は大仕事だった。しかし、何とか、16台のトラック・バン・乗用車、5台のトラックと8台のトレーラーと選ばれた装備品が避難した。避難の判断は正しかった。もし、一日遅れていたら、かなりのものが取り残されてしまっただろう。

◆大々的避難作戦
そこから先のムルーリナ牧場への道路は、陸軍の6輪駆動車にチエンを巻いて、何とか泥を掻き出して通過したが、それ以外のクルマでは移動できなかった(図)。幸い天候が回復して日中トラクターとランドローバーの移動が可能になり、大々的な避難作戦が始まったが、わずかな距離の移動に数時間掛かった。

スライド1

今回は、記録挑戦を妨げる降雨との戦いの一部始終を報告した。
次回は、苦心して建設したコースの水没による失意の挑戦断念とその反響をお伝えする。

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