交通安全コラム

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第318回 地上最高速の争い(152)―英国人の執念―再挑戦でも苦闘(2)

前回は、ふたたび雨で妨げられた翌年の再挑戦でのチームの苦闘の模様をお伝えした。
今回は、またもや雨で記録挑戦の延期を強いられるチームの苦悩と労苦をお伝えする。

◆今年の最速を記録
5月28日、ドナルド・キャンベルは、公式計時員による1キロ区間での時速352マイルを記録した(図)。今年のエア湖での最速である。チームメンバーたちは、夕食前のビールを飲みながら、ジョン・コッブの記録は一週間以内に破られるだろう、もう帰国の飛行機に乗ったも同然である、と語り合った。

スライド1

◆吹き続く風
キャンベルは、当地での最速を記録して希望を見出したが、翌日、西風に冬の雨の予告を感じ、事務局長と車検員などの立会人の招請を打電した。運悪く強い風が数日吹き続き風は収まらなかったが、5月31日には待ちきれずに走行した。しかし、時速300マイルを超えたところで横風のためコースを外れそうになった。

◆時速389マイル
翌6月1日(月)、風が収まったかに見えたが、ふたたび吹き始めた。しかし、公式の記録挑戦を強行した。スロットルを時速450マイル相当にセットしたが、路面が柔らかくブレーキが掛かり、またしても風で、あわやコントロールを失うところだった。それでも時速389マイルを記録した。

◆最後の走行
帰路は轍を避けて走行したが、時速360マイルを超えたところで轍に嵌り、スロットルを戻さなければならなかった。そのため、記録は時速352マイルに留まった。予定していた帰国日程が近づいたが、最後にもう一度だけやってみることにした。風が吹き続いたが、6月7日になり、やっと凪いて走行が可能になった。

◆故障が命を救う
しかし、油圧の不具合でスロットルの動きが不調だった。時速は365マイルにも届かなかったが、轍で蛇行し危うくコントロールを失うところだった。もし、スロットルに不具合がなく、もっと高速でコントロールを失えば、大惨事になった可能性があった。故障がキャンベルの命を救った。

◆4回限りの走行
キャンベルは、多くの人員を予定通り帰国させて小規模化したチームを現地に残し、最後の記録挑戦を試みることを決断した。コースの状態が改善するのを待つ間、残された膨大な長さの轍を塩で埋める作業を続けた。走行は4回が限度なので、走路が乾燥し、風のない条件でのみ走行する計画で、チームは、7月にコースに戻った。

今回は、またもや雨で記録挑戦の延期を強いられるチームの苦悩と労苦をお伝えした。
次回は、その後のチームの奮闘と新記録達成までの経過をお伝えする。

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