交通安全コラム
第325回 地上最高速の争い(159)記録ラッシュ―クレイグ・ブリードラブのリベンジ(3)
- Date:
- 2025/03/15
- Author:
- 佐野彰一(元東京電機大学教授)
前回は、ブリードラブの記録更新と往路での時速500マイル突破の経過を報告した。
今回は、この復路の走行の劇的な結末と、アート・アルフォンズの反撃開始をお伝えする。
◆吹飛んだドラッグシュート
1964年10月15日のブリードラブの往路は、時速500マイルを超える初めての正式記録となった。しかし、戻りの走行では大波乱が起こる。計測区間を過ぎてドラッグシュートを展開すると、次々に大音響をたてて引綱が切れて吹き飛んでしまった。ブレーキを踏んだが瞬時に焼滅した。
◆2マイル先は土手
クルマは時速250マイルで往路の出発地点を通過し、塩の粉末を跳ね上げながら湿った湖面を滑って行った。2マイルほど先には、製塩会社が排水溝を掘って出た粘土質の土の捨て場として造った6フィート高さの土手がある。土手の先には排水溝と道路があり、さらにすぐ先には鉄道線路がある。
◆続く暴走
コース端部と土手の間には、コースを直角に横切って二列の電話の電柱が並ぶ。ブリードラブは前輪を最大に転舵したが、その角度はわずかで、クルマは大きな円弧を描いて右に曲がっていった。左後輪が二列目の電柱にぶつかり、右車輪が別の電柱の支持ワイヤーに引っかかったが暴走は続いた。
◆巨大な水しぶき
出発地点からは、クルマの進路が土手に平行になったように見えたが、突然、巨大な水しぶきが上がった。クルマは土手に30度の角度でぶつかったが難なく乗り越え、その先の排水溝に飛び込んだのだ。現場に近づくと水面からはクルマの後部だけが露出しているのが見えた(図)。

◆500マイル超えの新記録
ブリードラブは素早くキャノピーを開けて、からくも脱出し、土手の上で無事を喜んで笑いながら大声で叫び、飛び跳ねていた。彼が最初に言ったことは「クルマを壊してしまった」だった。それから「速度はどうだった」と尋ねた。平均時速526.27マイルの新記録だった。しかし、1964年のシーズンはこれで終わりではなかった。
◆アートのリベンジ
12日後、アート・アルフォンズが強力なグリーン・モンスターとともに戻ってきた。彼の2回目の往路は、1マイル区間で時速515マイル、1キロ区間で時速519マイルだった。復路、計測区間に入る直前には、対気速度計は時速550マイルには届かなかった。そこで、彼はスロットルをストッパーまで踏み込みアフターバーナーを点火して、区間中そのまま保った。
今回は、ブリードラブの復路の劇的な結末と、アルフォンズの反撃開始をお伝えした。
次回は、アルフォンズの記録奪還と、ブリードラブの新しいクルマによるアルフォンズとの対決となる1965年シーズンの経過をお伝えする。
