交通安全コラム
第328回 地上最高速の争い(162)続く記録ラッシュ―時速600マイルへ(2)―
- Date:
- 2025/05/01
- Author:
- 佐野彰一(元東京電機大学教授)
前回は、アルフォンズのブリードラブへの反撃と、新発想の車輪駆動車の出現を報告した。
今回は、カリフォルニアからのビル・サマーズの車輪駆動車による新記録樹立を報告する。
◆時速400マイル超え
サマーズ兄弟は、ゴールデンロッドの駆動系のゴム継手の破損、調子の悪い1台のエンジン、前車輪のベアリングの不具合、エンジンをつなぐ歯車の折損など、トラブルに悩まされた。それでも、時間に追われるなかで頑張って、時速373.51から405.09マイルまで到達した。幸い、11月7日のアルフォンズの大事故で、サマーズ兄弟は、コースをほぼ独占的に使用できることになった。
◆世界記録を米が独占
11日の走行で後車輪のベアリングが破損したが、彼らは徹夜で頑張り、翌日、小雨にもかかわらず、平均時速409.277マイルの車輪駆動での新記録を樹立した。これは英国人ドナルド・キャンベルの記録を破るもので、今や、米国が、ジェットと車輪駆動の両クラスの世界記録を独占することになった。
◆記録を奪還
一方、ブリードラブには、アフターバーナーを使えばグリーン・モンスターより先に時速600マイルを突破する自信があった。クルマの調整に8日を費やしたが、11月15日、簡単に1マイル区間で往路時速593.178マイル、復路608.201マイルを達成した。平均時速は600.601マイルで、彼の野望は実現した。間もなく天候が悪化して、1965年のボンネビルは閉鎖された。
◆天然ガス工業会
その後、米国ガス技術工業協会のディック・ケラーとその友人が、液体ロケット推進のクルマを造るという極めて野心的な計画を考えた。これに、天然ガス工業会がLNG利用の可能性をPRするため、スポンサーとなった。クルマは“ブルーフレーム”と名付けられ、設計と製作はガス技術大学とリアクション・ダイナミックス社によって行われた。
◆LNGと過酸化水素
“ブルーフレーム”のロケットエンジンには、液化LNGと過酸化水素が推進剤として使われる。シャシは、アルミ製のセミモノコックの中央部分とチューブ構造の先端とコックピット部分からなる。前輪はコイルとショックのストラット、後輪は固定。タイヤはグッドイヤー製でブリードラブの記録車と同じものである。
◆狭い前輪間隔
減速には、最高速からは7.3フィート径の、時速250マイルで16フィートのリボンパラシュートが使われ、最終的には後輪の14インチディスクブレーキが使われる。全長38フィート2.6インチ、全高は尾翼先端で8フィート1.5インチ、燃料を除いた重量は6500ポンド。軸距306.1インチ、輪距前輪8.75インチ、後輪84インチで一見三輪車である(図)。

今回は、カリフォルニアからのビル・サマーズの車輪駆動車による新記録樹立を報告した。
次回は、“ブルーフレーム”の新記録と英国チームのスラスト2の挑戦をお伝えする。
