交通安全コラム
前回は、ヨーロッパの道路交通情報技術開発の背景とその展開の経過を紹介した。
- Date:
- 2014/12/31
- Author:
- 佐野彰一(元東京電機大学教授)
前回は、ヨーロッパの道路交通情報技術開発の背景とその展開の経過を紹介した。
今回は、その後のヨーロッパの道路交通情報技術開発の進展の状況を見ていく。
◆さまざまなプロジェクト
1994 年に“DRIVE”を引き継いで、“TTAP”が始まった。この計画では、道路をはじめ航空、鉄道、海上交通などそれぞれで、国や企業、研究機関によるプロジェクトが複合的に関係しながら、経済の成長と発展に寄与するために、欧州全域および各国の状況を考慮しつつ、情報通信技術の研究開発が進められた。更に、1996年には、ヨーロッパの長距離路線と都市内の輸送を適切に接続し、相互運用を可能にする全欧的広域ビジョンの情報技術開発を目的とするプロジェクト“TEN-T”も始まった。
◆ITS Europe
一方、ヨーロッパには国情の異なる多くの国があり、各々の都市における自動車交通の形成に長い歴史的経緯があり、技術開発を進めただけでは、容易には実用化に結び付かないとの懸念があった。そこで、実用化のための戦略的分析と計画立案、標準化を進める官民を統合する実用化推進機構“ERTICO(ITS Europe)”が発足し、米国のITS Americaと協力して事業を推進することになった。
◆C2C CC
2001年、EC委員会は、4万人の交通事故死者を2010年に半減させる目標で道路交通情報技術を駆使した高度車両安全システムの導入を提示している。この目標には従来の衝突安全対策の延長では達成困難で、事故防止対策が必要との認識が高まり、2004年に自動車会社6社で車車間通信システムの標準化を図る非営利団体“C2C CC(Car to Car Communication Consortium)”が結成された。
◆無線標準仕様決定
C2C CCはERTICOと協調し、交通事故数の削減を最優先に活動を続け、メンバーは増加し、現在では、車載機器メーカー、大学、研究機関を含めて60の団体が参加している。2006年には、車載機器をルーターとして、情報を周囲のクルマにバケツリレーするための5.9GHzの無線LANシステムの標準化の仕様を決定し、これを2013年に12のヨーロッパ主要自動車会社が承認した(図1、2)。
◆2015年量産化
さらに、これら自動車会社は2015年の新車に通信装置を車載して市場に出すことを目標に開発を続けることに同意した。ただし、標準化された通信システムを使用するが、情報をどのようにドライバーに伝達するかの手法は各社に任されており、この領域で開発競争が展開されるものと考えられる。ヨーロッパでも、いよいよV2Vから実用化が始まる様相を呈している。
今回は、技術開発が汎欧的に広がったが、実用化はV2Vからとの動向をお伝えした。
次回は、我が国の道路交通情報技術開発の進展の状況を黎明期から見ていく。