交通安全コラム

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自動車誕生前史(15)―点火装置の開発―

前回は、燃焼時の圧力上昇を直接動力として取り出す方法が模索された経過を報告した。
今回は、電気利用以前の点火装置開発の取り組みと、実用エンジンの出現を紹介する。

◆バーネットの点火装置
混合気を点火する前に気筒内で圧縮する、というアイデアを盛り込んだウイリアム・バーネットのエンジンは、構造が極めて複雑で、当時の技術では製作できなかった。しかし、彼の点火装置のアイデアは優れたもので、その後、電気点火法が主流となるまで、約60年間にわたって内燃式エンジンで使われることになる。

◆作動原理
彼の点火装置では、中央バーナー室と燃焼室の間に回転しながら開閉する窓を設け、クランクの回転に連動して点火タイミングに合わせて窓を開く。すると混合気が発火して爆風で中央バーナーが吹き消されるが、隣接して設けられたパイロット・バーナーが同じく回転して開いた窓から中央バーナーを再点火する、というサイクルが繰り返される(図1)。

バーネットの点火装置

◆ニュートンの点火装置
バーネットの点火装置は、19世紀のうちに電気点火法に取って代わられるが、この時期にA. V. ニュートンによって、20世紀まで焼玉エンジンに生き長らえた熱管法が発明されている(図2)。混合気を吸い込みながらピストンが点火孔を通過すると、熱管が混合気に露出されて発火する。しかし、実用化は30年後の1885年で、ガソリン自動車第1号のダイムラーのエンジンで使用された。

ニュートンの点火装置

◆実用エンジンの前座
ここで、舞台はスランスに移り、ベルギー生まれのフランス人エチエンヌ・ルノワールが1860年に初の本格的な実用内燃式エンジンを開発する。このエンジンの普及については前回で触れたが、その後英国でも製造が行われ、実物は20世紀初頭まで見ることができたといわれている。

◆電気点火法の出現
構造は、まさしく蒸気エンジンである(図3)。吸い込んだガスと空気の混合気に、ピストンの行程中央で点火され、往復で仕事が行われる。この原理は、英国の技術者によって発案されていたので、彼は発明者ではなく完成者であると考えられているが、注目すべきは、点火が電気で行われていることである。彼は、電気メッキに興味をもち、電信技術の改良なども行っており、電気に関する知識と技術も身に付けた、実務的な技術者だったようだ。

ルノアールのエンジン

今回は、電気利用以前の点火装置開発の取り組みと、電気点火の実用エンジンの出現を紹介した。
次回は、ルノアールのエンジンの性能と内燃機関の性能向上の提案などを紹介する。

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