交通安全コラム

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自動車誕生前史(18)―新たなヒーロー―

前回は、効率を向上させたオットーとランゲンの大気圧ガスエンジンの成功を紹介した。
今回は、彼らによる四サイクル内燃式エンジンの完成と新たなヒーローを紹介したい。

◆静粛エンジン
オットーとランゲンは、クランクを持たないフリーピストン大気圧ガスエンの成功で得た資金を使って研究を続け、ついに1876年に、現在のエンジンの基本原理である4サイクルエンジンを完成した(図)。このエンジンはクランクを使うため、フリーピストン型のような大きな騒音を出さないので、“静粛エンジン”とも呼ばれた。

オットーの4 サイクルエンジンの断面図

◆燃費をさらに半減
吸入弁には従来の“すべり弁”を使ったが、熱負荷が厳しく潤滑が困難で故障の原因となる排気弁を、現在のエンジンと同様の“きのこ弁”に替えるとともに、信頼性の高い火炎点火法を踏襲した。燃費もフリーピストン型からさらに半減し、ルノアールエンジンの約1/4となって、工業的な限界に近づくもので、文字通りの実用エンジンとなった。

◆カール・ベンツ
この4サイクルエンジンは、特許が1877年に認められ、以降10年間に30,000台以上が販売された。しかし、この二人はエンジンでクルマを走らせることには関心が低かった。
ところが、自動車の完成を目指してエンジンを開発し、それを成し遂げた自動車技術史の輝かしいヒーローが現れる。その一人は、ドイツ人のカール・ベンツである。

◆頭脳明晰・経験豊富
機械が好きな鉄道機関士の息子カールは、2歳で父親を失ったが、母親の献身で、優れた教師に恵まれた高等専門学校まで卒業した。彼は頭脳明晰で、機械・機関車・タービン・ボイラーなどの製作工場の組立工を皮切りに、幾つかの会社で蒸気エンジンやガスエンジンについての経験を積んだ。

◆2サイクルエンジン
その後、独立して工場を経営し、経営は楽ではなかったが、ささやかな利益でエンジンの開発を始めた。ベンツが1878年に最初に開発したエンジンは2サイクルだった。それは、4サイクルの特許を避けるためだった。

◆自動車開発会社の設立
彼は、このエンジンの事業化のために、共同出資者を得て新会社を起こしたが、彼の願いである自動車の開発に反対されたため、会社を辞めた。しかし、彼のエンジンを高く評価した知人が新たな出資者となって、ふたたび会社を設立し、今度は、自動車の開発が会社の定款に盛り込まれた。

今回は、4サイクル内燃式エンジンの完成と新たなヒーローを紹介した。
次回は、ガソリン自動車の開発に生涯を捧げる開拓者としての彼の歩みを紹介する。

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