交通安全コラム

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自動車レースの発展(1)―ド・ディオン伯爵とその企画―

前回は、史上初の自動車レースでのダイムラーエンジンの勝利とその開発思想を紹介した。
今回は、次のレースを企画したド・ディオン伯爵の会社の業績と自動車クラブ誕生の経緯を紹介する。

◆ド・ディオン-ブートン社
トップでゴールインしながら優勝を逃した蒸気車のド・ディオン-ブートン社のド・ディオン伯爵が、さらに距離を延ばしたイベントを企画した。同社は、その後、自動車と高速ガソリンエンジンの製造権を多くの会社に売るほか、1910年には初めてのV8エンジンを量産して人々を驚かせた。しかし、会社は1932年に自動車生産を止めている。

◆車軸式サスペンション
ド・ディオンの名前は、現在も自動車の技術用語として通用している。車輪を支えるサスペンションは、路面の凹凸に軽快に追従する軽量さと、路面に対するタイヤの姿勢が変化しにくい特性が必要である。後輪では、駆動力を作り出す終減速装置(通称デフ)を中央に置いて、左右の車輪と一体に結合する「車軸式」サスペンションが、頑丈で作りやすいので、現在すべてのトラックと一部の乗用車で使われている(図1)。

車軸式サスペンション

◆ド・ディオン アクスル
しかし、この構造では、デフの重量が加わるため、タイヤの、路面への追従性が悪化して乗り心地を損ない、路面への密着度が低下してコーナリング性能にも不利になる。それを防ぐため、一部の高級乗用車やスポーツカーで、左右の車輪は車軸で一体的に結合するが、デフを車体側に固定し、屈曲・伸縮できるドライブシャフトでエンジンからの回転を車輪に伝達することで、車輪側の重量増加を防ぐ構造が使われている。この形式は「ド・ディオン アクスル」と呼ばれているが、その根拠は、ド・ディオン車がこの構造を初めて採用したからである(図2)。

ド・ディオン アクスル

◆フランス自動車クラブ
このド・ディオン伯爵の企画は、パリから南仏のボルドーを往復する1200キロに近い長距離レースだった。クルマの完成度が低い当時としては極めて過酷なレースで、何故このように距離が大幅に延長されたのか、その趣意は明らかではない。
彼は、このレースのために主催委員会を組織した。この組織の発足が「フランス自動車クラブ」の誕生へとつながり、以降、このクラブが母体となって発展した機構が、自動車競技とその記録を国際的に公認することになる。

今回は、次のレースイベントを企画したド・ディオン伯爵の会社の業績とフランス自動車クラブ誕生の経緯を紹介した。
次回は、パリ―ボルドーレースの内容を紹介する。

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