研究助成プログラム

助成研究者インタビュー

ゾーン30で自動車走行速度を30km/h以下にするためには適切な対策を実施することが重要

タカタ財団・2018年度研究助成の対象テーマ
『対策内容を考慮したゾーン30の評価に関する研究』
この研究の概容について、山岡俊一氏に語っていただきました。

豊田高専山岡

交通問題として『対策内容を考慮したゾーン30の評価に関する研究』を行うに至った経緯についてご説明ください。

 私は大学院修士課程から現在まで、住居系地区の生活道路における交通安全対策をメインの研究テーマとしてきました。

 具体的には、①コミュニティ道路の整備効果と課題に関する研究、②ハード的対策(コミュニティ道路や狭さく、ハンプ等)とソフト的対策(一方通行規制や最高速度30km/hの速度規制等)を面的に展開するコミュニティ・ゾーンの経年的評価に関する研究などが挙げられます。
 
 これらの研究を進めていく中で、当たり前のことですが、適切なハード的対策やソフト的対策を適用することで、通過交通が減少し、自動車走行速度が抑制されることが分かりました。
 しかし、いつも適切な対策を実施することができるわけではありません。対策によっては、通過交通減少や自動車走行速度抑制等のメリットがある一方、そこで暮らす住民にとっても不便になることがあったり、住民が不安に思ってしまうことがあるためです(道路や周辺環境、建設コスト、沿道住民の事情等により、どうしても適用できないこともあります)。
 
 例えば、地区を通過しにくくするために一方通行規制を再配置すると、そこで暮らす住民にとっても不便になるかもしれません。また、ハンプを設置すると、振動や騒音が心配されますし(現在では形状の研究が進み、振動や騒音はかなり抑えられています)、住民が自動車で走行する時のことを考えて不安になる方もいらっしゃいます。このようなことから、高い整備効果が期待できる対策を思うように実施できないケースが多々ありました。
 
 そのような中、これまでは生活道路の交通安全対策はハード的対策の実施を前提としたものが多かったのですが、ゾーン30は『 ”ゾーン内の最高速度30km/hの区域規制” と ”路側帯の設置・拡幅と車道中央線の抹消” を前提としつつ、その他の対策については、住民の意見と財政的制約を踏まえ、実現可能な対策から順次行うこと。』という考え方です。
 すなわち、「ハード的対策の適用は難しい、だから何もしない。」のではなく、ゾーン内の最高速度30km/hの区域規制だけでもやろうという考え方なのだと思います。

 そのため、ゾーン30は平成30年度末までに3,649箇所で整備され、現在も急速に普及していますが、ハンプや狭さく等のハード対策をしっかりと整備している地区がある一方、出入り口にゾーンを示す標識や路面標示を整備するのみで、ゾーンの中は何も対策していない地区が非常に多くなっています。そこで、整備内容によってゾーン30の整備効果に差があるのではないかと考え、本研究の着想に至りました。
 
本研究についての進捗状況をお教え下さい。

 研究対象とするゾーン30整備地区を9地区選定し、すべての地区で通勤・通学時間帯の朝のピーク時(午前7時~9時)に自動車走行速度調査を実施しました。計測した路線数は合計で45路線です。その結果、整備内容、ハード的対策の有無によって自動車走行速度に違いが見られました。

 具体的には、ハード的対策が実施されていない路線において平均走行速度が30km/hを超過している傾向を確認できました。また、3地区の住民に対しアンケート調査を実施しました。今年度、新たに3地区で実施します。

 アンケート調査では、ゾーン30内の路線に対する評価、ゾーン30に求めること、ゾーン30の認知度、ハード的対策に対する受容性等を尋ねています。
 また、研究対象地区の交通事故データの収集もしています。なお、11月30日~12月2日に開催される土木計画学研究発表会(秋大会)において、現在までの成果をまとめて発表いたします。

これまで同様の研究は存在しましたか。
 
 ゾーン30を対象にした研究は存在します。しかし、本研究のように整備内容の異なる複数のゾーン30において調査し、比較分析している研究はまだ存在していないと認識しています。

本研究の成果は、社会でどのように役立てられ、活用されていくことが期待されますか。
或いは、今後どのような形で社会に寄与していくべきとお考えでしょうか?
イメージをお教えください。

 ゾーン30の整備内容の違いと整備効果(特に自動車走行速度の抑制効果)の関係を示すことができます。この成果を活用し、各種対策を導入した場合にどれほど速度抑制効果が期待できるのかを定量的に示すことができ、適切な対策内容を検討するための資料とすることができると考えています。

 また、本研究の成果を基に、どのような対策を実施すればどの程度の速度抑制効果が得られるのかを住民に示すことができます。このことによって、速度抑制効果は大きいものの住民にとって抵抗感の強いハンプや狭さく等のハード的対策に対する住民の理解が得られやすくなる可能性があると考えています。

2018年度タカタ財団助成研究 

『対策内容を考慮したゾーン30の評価に関する研究』概要

研究代表者
豊田工業高等専門学校 教授
山岡俊一

 平成23年度より、住居系地区において全面的に最高速度を30km/hに規制するゾーン30の整備が全国各地で進められている。
 ゾーン30は平成28年度末までに約3000箇所で整備され、現在も急速に普及している。その結果、ゾーン30を整備した効果として「交通事故件数の減少」、「自動車走行速度の低下」が警察庁より報告されている。

 しかし、ゾーン30の具体的な対策内容は様々であり、ハンプや狭さく等のハード対策をしっかりと整備している地区がある一方、出入り口にゾーンを示す標識や路面標示を整備するのみで、ゾーンの中は何も対策していない地区が多い。そのため、整備内容によって効果に差があると考えられる。

 三村泰広氏(公益財団法人 豊田都市交通研究所 主任研究員)等は、ゾーン30を対象に調査を実施した結果、住民の約半数がゾーン30を認知していないことを指摘しており、ゾーン出入り口の対策だけでは効果が小さくなることが懸念される。
 しかしながら、ゾーン30における対策内容と整備効果の関係性は明らかではない。そこで本研究では、様々な対策レベルのゾーン30の整備効果を評価し、整備内容と整備効果の関係性を明らかにする。

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