研究助成プログラム

助成研究者インタビュー・自己紹介

研究テーマ「運転・認知能力を反映する神経バッテリーメーターパネル認識テストの開発」

京都大学医学研究科人間健康科学系専攻 木下彩栄と申します。

まず最初に、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、まだ「花嫁修業」という言葉が死語ではなかった時代に、何かしら社会に貢献したいと思い、京都大学医学部に進学しました。当時、120名の同級生の中で女子は6名。しかしながら、大学時代は男女の区別なく学び、遊び、好きなことをして楽しく過ごしました。卒業後は、脳の疾患の魅力にとりつかれ、神経内科(現在、脳神経内科と言います)に入局し、数年間の臨床研修を経て、京大の大学院で認知症やシナプスの研究をして博士学位を取得いたしました。その後、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院に留学して、さらにアルツハイマー病の病態の研究を進め、帰国後は、再び京都大学に戻り、認知症の臨床、研究、そして教育に関わってきております。

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私が研修医だった頃、アルツハイマー病の患者さんはまだそれほど多くはなく、認知症(当時は痴呆症と言っておりました)は、何か特殊な病気のような雰囲気がありました。たった一世代のうちに、日本自体が、人類歴史上未曾有の超高齢社会となり、認知症患者数は700万人にも到達しようかという勢いです。神経内科の門をたたいた頃には想像もつかなかったような社会で、自分の今できることは何かということを考えながら、若い頃に考えていた社会貢献が少しでもできているだろうかと自問自答をしています。
専門医として、大学病院の外来で認知症患者を含む脳神経内科疾患の患者を診療しつつ、大学人として、研究面でも新しいことを開拓していかなければならないと思っております。
留学から帰国後に開始したのは、生活習慣が認知症、特にアルツハイマー病の病態にどのように影響するかという研究です。モデルマウスを用いての実験で、高脂肪食はアルツハイマー病の病態を悪化させ、運動は逆に改善することを示しました。現在も、運動による介入がどのような仕組みでアルツハイマー病に良い影響を与えるのかということを追究しており、一昨年には、運動により筋肉から出るホルモンが脳内に良い作用を与える可能性を発表しています。
その一方で、すでに発症した患者さんを支援するために何ができるのかということを考えております。幸い、私の所属する人間健康科学系専攻では、医師以外にさまざまな医療系職種の研究者が所属しています。看護師、作業療法士などの資格を持つ研究者と協力し、認知症の方が自立した生活をできるだけ長く維持できるような研究も進めています。そういった面では、主婦としてまた母としての視点が役に立っているのかと思うこともあります。公益財団法人タカタ財団様よりいただきました助成金も、認知機能が低下するとどのような運転技術が低下するのかと言う視点から研究させていただいています。通常用いられている記憶テスト以外にも、別のタイプの心理テストを用いた方が運転技術を反映するのではないかという仮説を立てて検討している最中です。
脳は唯一無二の臓器で、老化したからといって取り替えが利かないものです。ですから、超高齢化にともない、認知症の患者数が増加するのは、生物としてある意味必然の帰結であると考えます。認知症は生活を障害する病です。できるだけ進行を遅らせ、自立した生活を支援することが、そうした認知症患者さんや介護者の方の生活の質を高めるのに重要であると考えています。生活習慣への介入による予防・進行抑制や生活の支援、そういった「生活」に焦点を当てた地道な研究を重ねて、少しでも認知症患者さんのお役に立てればと願っております。
最後になりましたが、こうした研究の意図を理解して下さり、ご支援くださった公益財団法人タカタ財団様には、この場をお借りして深く御礼申し上げます。

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