研究助成プログラム

助成研究者インタビュー・自己紹介

研究テーマ「長期観測運転データを用いた運転行動階層モデルに基づく高齢運転者の危険運転行動発生メカニズムの分析」

名古屋大学未来材料・システム研究所の山本俊行です。

はじめに,自己紹介をさせていただきます.私は京都出身で,京都大学工学部交通土木工学科を卒業し,同大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程を修了しました.引き続き博士課程に進学しましたが,1年後に所属していた研究室の助手のポストが空いたため博士課程を中退し,助手として働きながら博士号を取得しました.博士論文の研究テーマは連続時間軸上における世帯の自動車保有更新行動及び世帯内での配分・利用行動に関する研究というもので,自動車利用に着目していたものの,交通安全とは異なるテーマでした.しかしながら,自動車の利用に関心を持ったことで必然的に自動車の負の側面である交通事故にも興味を持つことになりました.また,自動車保有という長期間における意思決定は長期観測データが重要であり,長期間の行動を観測するという視点は今回の研究テーマにも通じるものです.

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博士号取得後にフランス国立交通・安全研究所(INRETS,現在は統合されてIFSTTAR)や米国ワシントン大学に客員研究員として滞在する機会を得ました.特に,ワシントン大学ではFred Mannering教授とVenky Shankar助教授(当時)と共同研究する機会を得て,交通事故データの統計解析に取り組むことになったのが交通安全に関する研究を本格的に始めるきっかけとなりました.交通事故データには各交通事故の日時,場所,道路状況,運転者の属性等の様々な情報が含まれており,それらが特定の地点での事故発生頻度や個々の交通事故による損傷程度にどのような影響を与えるかを統計的に把握することが可能です.我々は,高速道路単路部でどのような運転者属性や道路条件が交通事故の損傷程度に影響を及ぼすか等について米国ワシントン州のデータを用いて分析しました.客員研究員の期間を終えて帰国してからは,名古屋大学に異動し,それ以降,名古屋大学にて交通行動分析と交通事故解析に関する研究を続けています.
交通事故データは非常に有用なデータですが,交通事故は稀事象であり交通事故に至らなかったヒヤリハットと呼ばれる危険な事象は交通事故の何倍も発生しています.それらの事象から交通安全に寄与する知見を得ることも重要です.さらには日常の運転行動を分析することでも交通事故の削減に資する知見を得ることも可能でしょう.また,近年では,超高齢社会化により高齢者による交通事故が問題となっています.交通事故死者数の更なる減少のために高齢運転者による交通事故の削減が求められており,衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した安全運転サポート車両の導入も進んでいますが,それだけでは十分ではありません.
今回助成を受けて進めている研究は,このような問題意識に基づくものです.すなわち,高齢者は加齢による身体機能の変化により,認知・判断・操作の運転能力が低下する特性が見られるものの,高齢者自身は自らの身体能力の変化を十分に把握していないケースが多く,過信行動を取る危険が潜在しています.ケスキネンの運転行動の階層モデルによれば,最上階の安全態度が一つ下の階の運転計画に必要な能力を決めており,更に下の階層の適切な状況認識・操作技術を求める危険状況に出会う確率を左右します.そのため,高齢運転者の交通事故削減のためには,危険に身をさらさないよう,高齢運転者の安全に対する態度と運転計画の関連性を把握し,それらが交通事故リスクに及ぼす影響を明らかにする必要があると考えています.

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