研究助成プログラム

助成研究者インタビュー・自己紹介

研究テーマ「交通死亡事故における救護義務違反の発生要因の科学的解析による予防策の考案」

研究助成を賜り公益財団法人タカタ財団並びに関係各位に心より御礼申し上げます。また、この度は助成研究者紹介の機会を賜り誠に有難うございます。

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私の略歴ですが、1987年3月香川医科大学(現.香川大学)医学部を卒業後、1991年3月熊本大学大学院医学研究科を修了し、その後、熊本大学医学部基礎系医員(法医学教室)、同法医学教室助手を経て、2000年4月佐賀医科大学(現.佐賀大学医学部)法医学教授、2008年1月東京女子医科大学医学部法医学講座教授となり現在に至っています。大学を卒業後一貫して法医学を専攻しています。法医学は、医学的解明を必要とする法律上の案件について、科学的で公正な医学的判断を下し,個人の擁護や社会の安全に寄与することを目的としています。交通事故による人の死亡は、医学的判断を要する法律上の案件であり、法医学の重要な課題です。交通事故死亡者は全て届出られて検察官による検視が行われ、必要に応じて法医学者による専門的な検査が行われています。交通事故による損傷で死亡したことを証明し、加害車両を特定し、事故原因を解明するために必要な司法手続きの一部を担っています。
交通事故による死亡者の法医学的検査では、死亡原因の診断と共に、どのようにして怪我を負ったのかを明らかにする必要があり、交通事故の3要因である人体、事故車両、事故現場の観察を大切にしています。交通死亡事故の鑑定では、不幸にも亡くなられた方だけでなく、車両と現場を視察するようにして、被害者と加害者の双方に中立で公正な鑑定を心掛けています。また、個々の交通事故の鑑定を鑑定だけで終わらせるのではなく、鑑定結果を医学的に集計して解析し、多くの人々に当てはまる原則を見出して人々の安全と健康に役立てることが大学で法医学を行う者の役割です。私共の対象となる交通事故は全ての交通事故ではなく、ひき逃げ、複数車両関与、病気の発症に基づく場合などの特殊な交通死亡事故が多く、また、被害者を対象としているので、対象に偏りはありますが、異なる見地から交通事故死亡者の減少に貢献できるのではと思われます。例えば、交通事故の予防では運転者の飲酒運転や認知症などへの対策は一般に行われていますが、私共の対象とする交通死亡事故では、運転者よりも歩行者が飲酒酩酊状態や認知症であることがしばしば経験されます。歩行者の飲酒酩酊と認知症への対策は交通事故死亡者の更なる減少に必要なことです。
今回の助成対象研究は交通事故の中でもひき逃げ死亡事故に関する研究です。ひき逃げ事故では運転者の救護義務違反が問われ、被害者は車両の特定や事故状況を明らかにするために法医学で検査が行われています。法医学で得られた知見を社会と人々に還元することが法医学の役割ですので、自身のこれまでの交通事故鑑定例のデータベースからひき逃げ死亡事故の鑑定例を抽出して解析し、運転者と歩行者の双方の要因、道路や環境の要因を明らかにし、加害者と被害者の双方の救済につながる知見を見出すことで、ひき逃げ死亡事故の予防、ひいては財団の標榜する「交通事故犠牲者をゼロ」にする活動への貢献を目的としています。歩行者の飲酒酩酊、認知症、急な病気の発症はひき逃げ死亡事故の要因であり対策が必要と考えられます。
交通事故に関するその他の研究として、死亡時画像診断(オートプシーイメージング;Ai)によるX線CT装置を用いた交通事故損傷の解析、交通事故での摂取薬物の分析、交通事故などでの頭部外傷による脳損傷の基礎研究を行っています。今回の助成研究を通じて私共の交通事故に関する活動を皆様に紹介させて頂き、多くの分野の方々から貴重なご意見を頂ければと思います。

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